糖質制限とダイエット
おしえて、先生!
オートファジーダイエットとは?ファスティングやプチ断食と同じ?

監修 医師・大学教授 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 川浪 大治

ねーきっつん、ファスティングって、何?なんだかカッコよさげな…
あー、それカンタンに言えば「断食」のことだな。
え!断食!!(ブルブル;;)ボクがやったら死んじゃうね…。
かもな(笑)。でも「オートファジーダイエット」っていう、ファスティングを使った興味深いやつもあるぞ。川浪せんせーい、オートファジーダイエットについてわかりやすく教えてくださーい!

若返り効果が期待できてダイエットにも効果的と注目のオートファジーダイエット。一体どんなダイエット方法なのか、糖質制限ダイエットと組み合わせても大丈夫なのか、専門の医師が解説します。
目次
老化を防ぐ奇跡の効果?!「オートファジー」とは?
細胞が自分で自分を浄化&リサイクルする仕組み
めたぬき、きっつん、こんにちは。今日はオートファジーダイエットについてお話しましょうね。
「オートファジー(Autophagy)」とは細胞内にある不要な物質を分解する仕組みのことです。「自ら(Auto)」と「食べる(Phagy)」をつなげた単語で、自食作用ともいわれています。
細胞内には多くの物質が存在しています。それらが古くなったり傷ついたりして細胞内に蓄積されると、細胞は障害を受け全身にさまざまな悪影響を及ぼします。これを防ぐために、新しい細胞に入れ替わる新陳代謝が行われていますが、この新陳代謝を活性化させる働きを行うのがオートファジーです。
オートファジーは、2016年に生物学者の大隅良典博士が「オートファジーの仕組みを解明」しノーベル生理学・医学賞を受賞した事がきっかけで多くの人に知られるようになりました。オートファジーの活性化によって膵臓から出るインスリンの分泌がよくなり、肥満解消などダイエットにも期待できると考えられます。
オートファジーダイエットの「メリット」は?
がん、糖尿病、心不全…さまざまな病気の予防ができる?
オートファジーは細胞内成分の新陳代謝やダイエットに効果がある他、免疫力を向上させる効果も期待できます。

アンチエイジングや若返りにも
オートファジーは糖尿病や心不全、癌、感染症、認知症など多くの疾患との関係が明らかになりつつあり、オートファジーの活性化をこれらの疾患の予防や治療に結び付けようとする研究が進められています。
さらに、マウスを使った実験では、「サーチュイン遺伝子」を増やすこともわかってきました。サーチュイン遺伝子は長寿遺伝子と呼ばれ、認知症の予防や肝臓の代謝改善、脂肪が溜まりにくい体質にするなど、さまざまなアンチエイジング効果が期待できます。また、空腹中には「グレリン」 という体の炎症を防ぐホルモンが分泌され、老化を進行させる炎症を防ぐ面からもアンチエイジング効果が期待できます。
胃腸の働きを調整、脂肪燃焼の効果も
オートファジーそのものの働きというより断食による効果となりますが、絶食して10時間後には肝臓に蓄積された糖が消費され、12〜14時間後には脂肪からエネルギーを消費し始め、脂肪燃焼能力がピークを迎えるといわれています。それにより断食によって脂質の代謝がよくなることがわかっています。
その他にも、オートファジーダイエットは胃腸を休めることができるため、消化機能を回復させ、腸内環境を整え、便秘解消にも効果があるといわれています。
オートファジーダイエットの「デメリット」は?
筋肉が落ちることも。だから適度な運動も
1日の食事回数を減らすため、それに伴い栄養摂取量が低下します。そのため筋肉量が低下することによって基礎代謝が低下する場合があります。これはオートファジーダイエットに限らずダイエット全般にいえることですが、食事制限だけではなく軽い運動も加えると、より健康的に痩せることができます。
なぜ、運動も併せて行うことが大切なのか?それはブドウ糖や脂肪の代謝をよくするためには筋肉の状態が非常に重要だからです。良質な筋肉を維持することで、糖や脂質の代謝が改善され、内臓脂肪に対しても好ましい作用があるのです。
何と言っても、空腹感が辛い…
これが最大の「デメリット」と言えるかも知れませんね。ダイエットは何より「継続」が大事です。ですが空腹時間が続いたことへの反動から、余計に食べ過ぎてしまう可能性もあるでしょう。そうなってはせっかくの努力も報われることはありません。そのような時は、ナッツやハイカカオチョコレートや大豆食品等の間食でうまく空腹感を乗り越えていきましょう。また、夕食時間と就寝時間を早めにするのも空腹感を乗り越えるヒントになるかも知れませんね。
オートファジーダイエットのやり方
オートファジーダイエット=基本は断食

このオートファジーを活用したオートファジーダイエットとは、簡単にいうと「ファスティング(断食)」のことです。16時間断食、16時間ファスティング、16時間ダイエットetcとも呼ばれているようです。一般的には一定時間、基本的には16時間断食をしてオートファジーを活性化させるというのが、基本的な考え方です。
オートファジーに適切な断食時間について明確なことはまだ研究途中となっていますが、1日のうち睡眠時間を含んだ16時間断食をするのが効果的という説が多いようです。例えば1日24時間の中で、16時間をファスティング、残りの8時間で食事をとるやり方です。
オートファジーダイエットのように、「1日の内で一定時間断食をするとダイエット効果があるのか」という論文が2022年に発表されました。その論文では、カロリー制限をするグループと、食べる時間を1日数時間と限定してその時間は何を食べてもいいとするグループに分けて体重の減り方を比較しました。
結果的にどちらのグループも体重が10キロ近く減少。カロリー制限ダイエットも、時間を決めて断食するダイエットも、どちらも痩せる効果があることが明らかになったのです。
また最近話題のファスティングの1つ、プチ断食は、定期的に断食を行うファスティングのことで、1週間のうちに半日から数日間断食を行います。例えば2日間はファスティング日、残りの5日間は普通に食事をとります。プチ断食も断食する時間が16時間経つとオートファジーが働きます。
どのようにオートファジーダイエットに取り組むかは自分にあったやり方で、体調を見ながら無理をせず始められるやり方をみつけるところから行いましょう。
オートファジーダイエットの疑問
何を食べてもいいの?
基本的に、食べてはいけないものはありませんが、食べ過ぎには注意しましょう。オートファジーダイエットは断食時間が長くなりますので、いきなり普通の食事をすると胃腸に負担をかけてしまいます。お粥や野菜スープなど消化に良いものから食べるようにしましょう。
何時間空けるのがベスト?
空腹になって1〜2時間でオートファジーを活性化させることは期待できません。最も効果的なのは、断食の時間が長ければ長いほどよいということ。最後の食事から16時間空けるようにしましょう。そして気を付けるべきなのは、寝る前に食べないということ。睡眠中はエネルギーをほぼ燃焼しないため、睡眠直前まで食べてしまうとオートファジーの効果が薄れてしまいます。
オートファジーダイエットに取り組むときの注意点

オートファジーは無理のない範囲で行うことが大切
オートファジーは体にとって重要なものであることは明らかですが、1日のうちの半分以上の断食を続けるのは至難の業。ダイエットは長期間で行うことを考え、そして緩やかに続けることが大切です。
同じダイエットをするなら、緩めの糖質制限のほうがおすすめです。たとえば、3食のうち、1食だけ白米や麺類などの炭水化物を控えるといったような、誰でも取り入れやすいダイエットなら続けられそうだと思いませんか?とくに、夕飯の糖質を控えることができれば、尚よしです。朝昼とは違い、活動量の減る夜は脂肪がつきやすいからです。「午後5から糖質制限」の緩やかな糖質制限ダイエットなら、楽しく、負担なく続けられると思いますよ。
関連記事:これでリバウンドなし!「午後5時から糖質制限ダイエット」その方法とは?
おーとふぁじーやってみようかなー!
空腹を10分ガマンできないめたぬーにはまずムリだな(笑)。
関連記事:色んなダイエットを比較!おすすめは糖質制限ダイエット?

監修

医師・大学教授
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 川浪 大治
・1998年 福岡大学医学部医学科卒業
・1998年 虎の門病院 内科研修医
・2004年 東京慈恵会医科大学 大学院博士課程修了
・2013年 同 糖尿病・代謝・内分泌内科 講師
・2018年 同 准教授
・2019年 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 教授
現日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会の専門医として診療に従事。
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