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糖質制限の基礎知識

おしえて、先生!

糖質制限ダイエットをするなら知っておくべき「糖質の1日の摂取量」とは?

糖質制限ダイエットをするなら知っておくべき「糖質の1日の摂取量」とは?

監修 医師 工藤内科 工藤 孝文

糖質制限ダイエットをするなら知っておくべき「糖質の1日の摂取量」とは?

ねー、きっつん、とーしつせいげんって、1日どのくらいとーしつ摂っていいの?

めたぬーにしては珍しくいい質問だな。

ダイエットを始める前にボクが食べてたのは〜1日にごはん5杯と、とんかつ3枚と、ラーメン3杯と、あ、あと替え玉と、ドーナツ10個。これだとやっぱりちょっと多かったよね〜? 

工藤せんせーい!
このフードファイターだぬきに1日に摂っていい糖質量を教えてあげてくださーい! 

糖質制限ダイエットの成功のカギは、何といっても糖質摂取量のコントロール。今回は、適切な1日の糖質量はもちろん、過剰摂取や摂取不足で生じるデメリットなど、正しい糖質の摂り方について専門家が詳しく解説します。 

そもそも「糖質」とは?

からだ作りと活動を支える「三大栄養素」のひとつ

めたぬき、きっつん、こんにちは。今日は「1日の糖質の適正摂取量」について聞きたいのですね。その前に、 そもそも「糖質(炭水化物)」がどういったものなのかを復習がてらお話ししましょう。 

食べ物に含まれる栄養素のうち、たんぱく質・脂質・炭水化物(糖質)「三大栄養素」と言います。そしてそれらは私たちの体づくりや、日々の活動のエネルギー源になるなど、私たちの体内でさまざまな役割を担っています。

その三大栄養素のひとつ「炭水化物」は「糖質」と「食物繊維」に分類されます。皆さんもご存じのとおり白米や麺類、パンなどが炭水化物の代表格ですね。 その炭水化物のうち「糖質」は体内で消化され、エネルギー源となります。一方「食物繊維」は体内で消化されず、ほとんどエネルギー源にはならずに、腸内環境を整えたりコレステロールの排泄を助けるなどの働きをします。また、血糖値の上昇を緩やかにする働きもあります。

糖質を摂り過ぎるとどうなるの? 

糖質というのは、体を動かすエネルギーの役目を持っています。体にとって必要なので、程良く摂取する必要があります。では、糖質の何が問題なのでしょうか。それは体が「糖質が入ってきた!」と認識し、必要な栄養素は受け取りつつ、血糖値が上がり過ぎないように調整すべくインスリンが分泌される働きが関係しています。このインスリンは血糖値を下げるときに、余分な糖分を脂肪に変えて体に貯蓄します。これが太る仕組みというわけなんです。 これまでにも、糖質の過剰摂取は体重の増加だけでなく、糖尿病や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病を引き起こしやすくなるということをお伝えしてきました。 

糖質の過剰摂取はうつ病の元に?

さらに、近年の研究では糖質の過剰摂取はうつ病や不安障害などの精神疾患の発症を高めるということも分かっています。 

ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの研究チームによると、7000人以上の被験者の摂食データを最長22年間にわたって調査したところ、糖質の多い食品や飲み物から毎日65g以上の糖分を摂取した男性は、糖質摂取量が39.5g以下の男性と比べると何らかの精神疾患にかかる可能性が23%高かったというのです。 

一般的に、うつ病は脳の問題と考えられていますが、私は「腸」がカギを握っているのではないかと推察します。糖質の摂り過ぎで腸が炎症を起こし、うつ病を発症させている可能性もゼロではないと考えています。 

過度な糖質制限ダイエットにも注意 

一方で、糖質を制限し過ぎるのも危険です。中には「糖質が太る原因ならできる限り糖質をゼロにすれば、ダイエットの効果が早く表れるのではないか」と考える人もいますが、糖質を極端に減らすと摂取カロリーまで減ってしまいます。この状態がずっと続くと、エネルギー不足になった体が今度は筋肉を分解してエネルギーを生み出そうとします。すると筋肉もどんどん減ってしまい、たとえ痩せられたとしても非常に不健康な体になってしまうのです。 

さらに、糖質制限ダイエットを頑張り過ぎると脳のエネルギー源であるブドウ糖までも不足します。すると今度は体内で「ケトン体」が増加して脂肪を燃やすようになります

この仕組みを利用したケトン体ダイエット(ケトジェニックダイエット)を好んでやっている人もいますが、むやみに糖質を減らしてケトン体を増やそうとするのは非常に体に負担をかけることになります。医師としては、バランスよく栄養を摂取して健康的に痩せてほしいと考えます。 

関連記事:今注目の「ケトジェニックダイエット」はダイエットに効果的?注意点は?

糖質の適正摂取量は?

糖質制限中の一般的な1日の糖質摂取量

糖質は「悪者」ではなく、コントロールさえできればよく、大切な栄養素です。糖質は1日あたりの総摂取カロリーの約半分を占めています。その適正摂取量は、糖質制限の目的やゴール設定、個人の体質によっても変わります。 

ここでは、一般的な糖質制限ダイエットで摂取できる糖質量について〈ユルユル〉〈ホドホド〉〈ガチガチ〉の3段階にレベルを分けて説明しましょう。 

〈ユルユル(糖質制限レベル1)〉 

初めての人はもちろん、糖尿病などで強制的に糖質を減らさなければならない人以外はこのレベルをおすすめします。糖質をカットしながらも栄養バランスの良い健康的なダイエットが可能です。 

【1日の糖質量】160g~170g以下  
【1食の糖質量】50〜55g以下 
【やせる体重の目安】1カ月で1〜2kg 
■主食は白米だと毎食100g程度は食べることができます。体重1kgあたり1.3gのタンパク質を摂りましょう。おやつはナッツやチーズ類、少量のフルーツなどがおすすめ。どうしても甘いものが欲しい時には低糖質スイーツなどで工夫を。 

〈ホドホド(糖質制限レベル2)〉 

ゆっくりでも確実にダイエットをしたい人や、目標体重に達して体型維持のために筋肉をつけたいなど、明らかな目的がある人に挑戦してほしいレベルです。 

【1日の糖質量】120g~130g以下  
【1食の糖質量】40g以下 
【やせる体重の目安】1カ月で1〜3kg 
■一食に摂れる炭水化物はかなり限られ、白米だと50〜70g程度です。おかずの味付けも甘くするのはNG。体重1kgあたり1.3gのタンパク質を摂りましょう。間食をしたい場合はさらに食事の量で調整をするなどの工夫が必要です。糖質ゼロ食品を有効に食べましょう。  

〈ガチガチ(糖質制限レベル3)〉 

大幅な減量をしなければならない人、血糖値が既に高く食事で改善したい人向けのレベルです。生半可な気持ちでは続かないので、強い意志が必要です。 

【1日の糖質量】60g以下  
【1食の糖質量】20g以下 
【やせる体重の目安】1カ月で2〜5kg  
■3食共に主食抜きでおかずだけになる覚悟を。カロリーは気にしなくていいので、がっつり肉類(ただし味付けは塩胡椒など低糖質のものに限る)を食べる、野菜具だくさんのスープなど自分に合ったストレスをためない食事を見つけましょう。体重1kgあたり1.3gのタンパク質を摂りましょう。

関連記事:6人に1人が糖尿病予備軍?『糖尿病の原因は糖質』なの?

無理のない糖質制限ライフのために

午後5時からの緩やかな糖質制限がおすすめ

強制的に血糖値を下げなければならない、体重を落とさなければならない、などの理由がない限り、私がおすすめしているのはレベル1をベースにした、緩やかな糖質制限です。主食の量は半分程度に減らし、その分おかずでタンパク質や食物繊維をしっかり摂る。 

また、午後5時から糖質制限ダイエット」もおすすめです。 

仕事や家事、育児など忙しい日中は糖質も含めてしっかり食べ、活動の少ない夜だけ「糖質を減らす、抜く」といった緩やかな糖質制限ダイエットだと長く、楽しく続けることができるでしょう。 

ダイエットの大原則は『継続すること』。初めから目標設定を高くして過度な糖質制限をすると続けるのが難しくなります。挫折してリバウンドしては元もこもありません。適度にユル〜く続けていくことが成功につながる一番の近道です。 

関連記事:これでリバウンドなし!「午後5時から糖質制限ダイエット」その方法とは?

じゃーボクはやっぱり「ユルユル糖質制限ダイエット」からだね!

めたぬーの場合は「ユルユルユルユルダイエット」くらいからじゃないとムリじゃね? 

監修

工藤 孝文

医師

工藤内科 工藤 孝文

内科医・糖尿病内科医・統合医療医・漢方医。
福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在は、自身のクリニック:みやま市工藤内科院長として「世界一のかかりつけ医」を目指して、日々、地域医療に力を注いでいる。

専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など。「患者さんに寄り添い、心と体を整える」をモットーに診療を行っている。

NHK「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。また、著書は50冊以上におよび、Amazonベストセラー多数。著書:アスコム「やせる出汁」は15万部突破のベストセラー。

日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会など多くの学会に所属。

2021年5月から開始となったYouTube『工藤孝文のかかりつけ医チャンネル』を開設。