糖質制限と食事
おしえて、先生!
糖質制限ダイエットはリスクあり?デメリットとその理由を解説
監修 医師・大学教授 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 川浪 大治
目次
糖質制限ダイエットを始めたらさ、なんだかぼーっとしちゃって…
いや、いつもだろ。ダイエットのせいにするなよ。
もう5日も炭水化物摂ってなくて、ふらふら〜。
え?5日も!?ほんと、めたぬーは極端過ぎ!
川浪せんせーい、単純過ぎるたぬきに正しい糖質制限の仕方を教えてくださーい
「糖質制限ダイエットを始めてみたい」と思っても、たくさんの情報が溢れ、 果たしてどの方法が正しいのかよく分かりませんよね。ついついストイックになり過ぎて、過度な制限をしてしまい、身体に大きな負担がかかることも。今回は、川浪先生に糖質制限の危険性についてわかりやすく解説していただきます。
過度な糖質制限は危険!?
糖質制限のリスクとは
めたぬき、きっつん、こんにちは。今日は糖質制限の危険性について解説しますね。まずお伝えしたいのは、糖質制限で期待できることがある一方、気を付けなければならないこともあることを知っておいていただきたいということです。
もちろん短期間なら体に大きな影響はないと考えられていますし、効果の出やすいダイエット法です。とはいえ糖質を完全に抜く生活を長期間続けるのは簡単ではありませんし、長続きしないですよね。だから私は緩やかな糖質制限を推奨しています。
では、過度な糖質制限をするとどのような危険があるのか、具体的に説明していきましょう。
頭痛やめまい、イライラさまざまな症状が出るケースも
低血糖症とは血糖値が正常範囲(空腹時血糖値は70~109 mg/dL)を下回り、脳などの中枢神経がエネルギー不足に陥って、頭痛やめまい、眠気などさまざまな症状を引き起こすものです。
糖質を制限することで低血糖症まではいかなくても、イライラしやすくなることもあります。空腹時にイライラとした気分になったことがあるという方もいるのではないでしょうか。
糖質制限をしている糖尿病患者さんが最近イライラすると言うので、適量のお米を食べるように指導したところ、イライラが解消するケースもありました。ある程度は糖質を摂って体が満たされた状態を作ることが望ましいのです。
食事のバランスが崩れると病気のリスクが上がる
糖質制限ダイエットをするとタンパク質や脂質の摂取量が増えてしまいがちです。タンパク質や脂質の量が過剰に増えてしまうと、中性脂肪やコレステロール値の上昇が懸念されますし、2型糖尿病や動脈硬化、心臓病などの発症リスクも上がるといわれています。タンパク質の摂りすぎによって、腎機能が悪化して慢性腎臓病になる可能性も否定できません。健康な人が高タンパク食を続けるだけなら大丈夫だと思いますが、糖尿病や高血圧の方は要注意です。
ブドウ糖が不足すると筋肉が落ちることも
筋肉はタンパク質をしっかり摂っていれば大丈夫というイメージがありますが、一定の糖質やカロリーをしっかり摂っていないと筋肉量は落ちてしまいます。筋肉はブドウ糖を取り込んで消費するという血糖値を正常に保つために大切な働きもしているので、筋肉を落とさないようにしていきたいものです。
特に妊婦はケトン体の増加に要注意
血中のケトン体が増加するケトーシスという症状に陥る可能性があります。
ケトン体とは体内の脂肪が変化して作られる物質でエネルギー源にもなりますが、過剰に増えてケトーシスに陥ると腎臓や心臓などさまざまな臓器障害につながります。ケトーシス症状の特徴として呼気が独特の香りに変わることもあります。
妊娠中の場合は特に注意が必要です。そもそも胎児は母親の胎盤を通じて、ブドウ糖を吸収して成長するので、糖質を摂らないと胎児がエネルギーを摂れなくなってしまいます。その上ケトーシスになると胎児に悪影響を及ぼす危険性もあるのです。
糖質制限ダイエットで便秘になりやすくなることも
お米やパンといった主食は糖質だけでできているわけではありません。糖質と食物繊維が合わさったものが炭水化物なので、必ず食物繊維が含まれています。糖質制限ダイエットをすることで、食物繊維の摂取量が減ってしまい、結果として消化管の働きに影響する可能性があるわけです。
糖質制限で急激に痩せすぎるのはNG
貧血や免疫力の低下につながることも
糖質制限をすると血糖値の上昇が少なくなり、インスリンの分泌量も減少します。しかし、インスリンには血糖値を下げるだけではなく、一定の脂肪組織を維持したり骨格筋を増やしたりする大切な役割もあります。一方で、脂肪摂取量が多くとなるとそれが元になって必要なインスリン分泌や作用が低下して血糖値が下がりにくくなる可能性もあります。
糖質制限を実施するにあたっては、体全体のバランスを考える視点が必要です。
そもそも急激に痩せることは、あまり体に良いことではありません。貧血や免疫力の低下につながりますし、体重の変動が激しい人は糖尿病のリスクが高まるというデータもあります。
ムリのない、続けられる緩やかな糖質制限を
午後5時から始める糖質制限ダイエットが効果的
糖質制限ダイエットは、カロリー制限ダイエットほど複雑な計算も必要なく、色々と気にしないで取り組めるためについ安易に始めがちですが、糖質は摂りすぎても摂らなさすぎても体に良くありません。
ですが過度な糖質制限には筋肉量が落ちてしまったり、糖尿病になりやすくなったりするといったリスクもあります。糖質制限ダイエットをするのであれば、活動量が活発な朝や昼ではなく、活動量が減る夜、つまり夕食だけ炭水化物を摂らないといったゆるやかな糖質制限がおすすめです。
炭水化物中心の食事で糖質を摂りすぎている人は適切な量に減らすべきですが、ただ糖質だけを減らせばよいかというと疑問が残ります。それは糖質を減らしたことだけが痩せた理由にはならないと考えられるからです。例えば、糖質の多い食事を減らしたことで、野菜や果物、魚の摂取量が増えたことが体に良い影響を及ぼした可能性も考えられます。 糖質だけに振り回されず肉や野菜、魚などバランスのよい食生活を心がけましょう。
糖質制限ダイエットは、主食(炭水化物)の見直しからはじめよう
毎日食べるごはんだから。続けることが何より大事だから。
私たちの日常の食生活で、最も多くの糖質(炭水化物)を摂取しているのは、ごはん、パン、麺といった「主食」からです。その主食の「ガマンしない、ムリしない」糖質とカロリーのコントロールが、糖質制限やダイエット成功のカギを握っていると言えます。
お茶碗1杯、レタス約半玉分の「食物繊維」を含む、GI値を抑え、「糖質とカロリーがカット」されたこんなお米もあります。
関連記事:糖質だけ気にしてもダメ?『GI値』そして今注目の『GL値」って何?
やり過ぎは返ってよくないんだね。じゃ抜いた5日分のご飯食べようっと♪
だめだこりゃ💦1年中くるみの皮でも食べてなさい。
監修
医師・大学教授
福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 川浪 大治
・1998年 福岡大学医学部医学科卒業
・1998年 虎の門病院 内科研修医
・2004年 東京慈恵会医科大学 大学院博士課程修了
・2013年 同 糖尿病・代謝・内分泌内科 講師
・2018年 同 准教授
・2019年 福岡大学医学部内分泌・糖尿病内科学 教授
現日本内科学会、日本糖尿病学会、日本内分泌学会の専門医として診療に従事。
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